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妊婦さんのMRI検査お願いします!

胎児奇形、胎盤の評価、妊娠中毒症…

けっこういろいろきますよね。

MRI検査を担っている我々にとって、これは避けて通ることはできません。

高速撮像系のシーケンスが使えるようになった現在、ロカライザーを撮像後、瞬間的に胎児の3次元的位置関係を把握し、脳3方向を短時間で収集していく。まさに職人芸の極みです。

妊娠中の画像診断のfirst choiceは,簡便性、経済性においても超音波検査が最優先です。でも超音波検査では、確定できないものや全体像を把握できないことがしばしば経験されます。

そこでMRIの出番ですが、正直妊婦さんには、X線を使うよりMRIの方が安全だろうぐらいで、動物実験以外で磁場が胎児に与える影響についてはあまり知られていませんでした。

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ガドリニウム造影剤

さらに造影剤…

毒性の強い重金属のガドリニウム…

キレート構造にしているとはいえ、排泄できなかったらどうなるの?

MRI造影剤投与による重金属残留問題

絶対大丈夫なわけないだろうと思っていました。

ガドリニウム造影ですが、以前より、NSF(Nephrogenic Systemic Fibrosis)等の副作用が発現するリスクがあったりすることから、妊婦への使用は基本的には断ってきましたが、

やりたくないけど、断るための根拠もNSF等の副作用リスクぐらいの武器しかなく、倫理委員会も通っているからと強気に依頼してくるためにやらざるを得なかった妊婦さんの造影MRI。

妊娠中のMRI検査の胎児期及び幼年期への影響

やっときました! 朗報です!

アメリカ医師会JAMAから2016年9月6日号に掲載された論文「Association between MRI exposure during pregnancy and fetal and childhood outcomes (妊娠中のMRI検査の胎児期及び幼年期への影響)」

妊娠初期3ヶ月にMRI検査を受けた約1700人の妊婦さんから生まれた子供を出産時から4歳児まで追跡した研究が発表されました。

内容をまとめると、

妊娠第一期のMRI撮影は、撮像しなかった群と比較して、胎児や幼少期における障害リスク(成長、発生異常、成長異常、ガンの発生率)の増加に関連なし。

しかし、

ガドリニウム造影MRIは、

死産率のリスクが高まる

4歳までにリューマチ様症状や皮膚炎症性の疾患の頻度が高まることが判明。

妊娠中のいつの実施でも、炎症性または浸潤性の皮膚障害、死産や新生児死亡のリスクなどと関連していることがわかりました。

したがって、『単純MRIの影響はありませんよ』と自信をもって答えることができるできるようになり、『造影剤の使用は避けるべきである』と強く進言できるようになりました。

ただ注意してほしいことは、造影剤は、絶対使用してはならないということではなく、常に造影剤を使用するときは、患者さんにとってのリスクとベネフィットを考える必要があるということです。

それから、有意差が認められなかったから絶対に大丈夫!ということではありません。 

今回の研究の対象や方法で違いがでなかっただけで、今後もこのような研究によって、MRIの安全性に対する正しい裏付けがとれることを期待しています。

 

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