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みなさん、こんにちは

2024年から始まる医師の働き方改革。我々技師にも少なからず影響があることは想像に難くありません。医師の働き方改革は、医師の労働時間の適正化や負担軽減を目指すものです。これにより、医師の働き方がより効率的になり、医療の質の向上や医師の健康管理が図られると期待されています。しかし、これは単に医師だけの問題ではありません。我々技師の働き方や業務にも同じような改革の波が押し寄せてくる可能性があります。事実、技師の技術スキルアップや研究の業績の考え方のベースとなるものは、医学界から影響を受けています。したがって、医師の働き方改革で議論されている内容は、技師も注視する必要があります。

今回は医師の働き方改革で話題となっている自己研鑽について、放射線技師が行う自己研鑽や部内勉強会、研究について、それが業務や残業に該当するかどうかを考えてみます。

そもそも残業とは

まずはみなさん残業のことをしっかりと把握されていますか?本題に入る前にまずは残業について確認しましょう。残業についてご承知の方はここは飛ばしてください。そもそも残業とは、労働基準法にもとづくと、残業とは時間外労働のことであり、「1日8時間、週40時間の法定労働時間を超えて働いた時間」を指します。よく誤解されるのですが、勤務時間を超えて働いた時間が残業時間ではありません。1日だと8時間労働(昼休み時間を除く)を超えた時間が残業時間です。つまり、1日6時間の勤務時間であって、2時間残業してもそれは残業(時間外労働)とはいいません。労働基準法では1日8時間を超えた労働時間を残業時間としており、使用者は好き勝手に労働者に残業させることはできません。そして、残業は本来、使用者の命令に基づいて行うものですが、このこともあまり周知されていないように感じます。その原因は、残業するしないは本人の自主性に任せていることが原因の一つとして考えられます。厳密にいえば、上司から検査業務を残業してください。という明確な指示がなければ残業する必要はないでしょうし、逆に上司の許可もとらずに装置の性能評価をするために勝手に残業して残業代がでなくとも文句はいえないでしょう。このあとも重要なポイントとしてでてきますが、残業は上司や使用者から命令(指示)される、または実施することが余儀なくされた時間外労働のことであることをご承知おきください。

自己研鑽と残業について

一般的に自己研鑽は、放射線技師が専門知識や技術を向上させるために主体的に行う学習活動です。例えば、検査の予習や復習、最新の医療技術や画像診断の進歩に関する文献の確認、オンラインコースの受講などが含まれます。自己研鑽は個人の責任範囲で行われるため、残業とはみなされません。ただし、放射線技師の自己研鑽、それが日常業務に支障をきたす場合は、状況によっては業務や残業とみなされる可能性もあります。どのような自己研鑽の場合が業務や残業に該当するのか、医師の研鑽について、現場における労働時間管理の取り扱いを明確化するために示された厚労省の第12回医師の働き方改革に関する検討会の案では、以下のような考え方と手続きが示されていますので参考になります。

医師の労働時間にかかる論点の取扱い(研鑽)
研鑽が労働時間に該当するかどうかについても、「使用者の指揮命令下に置かれているかどうか」により判断することとなるが、現場における医師の研鑽の労働時間管理の取扱いについて、第12回検討会でお示しした案を概ねの内容として、今後、考え方と適切に取り扱うための手続を示すこととしたい。
医師の研鑽については、医学は高度に専門的であることに加え、日進月歩の技術革新がなされており、そのような中、個々の医師が行う研鑽が労働であるか否かについては、当該医師の経験、業務、当該医療機関が当該医師に求める医療提供の水準等を踏まえて、現場における判断としては、当該医師の上司がどの範囲を現在の業務上必須と考え指示を行うかによらざるを得ない。労働に該当する範囲を医師本人、上司、使用者が明確に認識しうるよう、基本となる考え方を示すとともに、上司の指示と労働に該当するかどうかの判断との関係を明確化する手続等を示す。

研鑽の類型 考え方
・手続診療ガイドラインや新しい治療法等の勉強
• 一般的に、診療の準備行為等として、労働時間に該当。
• ただし、自由な意思に基づき、業務上必須ではない行為を所定労働時間外に自ら申し出て上司の指示なく行っていることが確認されていれば、労働時間に該当しないものとして取り扱う。

学会・院内勉強会等への参加や準備、専門医の取得・更新等
• こうした研鑽が奨励されている等の事情があっても、自由な意思に基づき、業務上必須ではない行為を所定労働時間外に自ら申し出て上司の指示なく行う時間については、一般的に労働時間に該当しない。

当直シフト外で時間外に待機し、診療や見学を行うこと
• ただし、見学中に診療(手伝いを含む。以下同じ。)を行った時間は労働時間として取扱い、見学の時間中に診療を行うことが慣習化(常態化)している場合は、見学の時間すべてを労働時間として取り扱う。

必要な手続等
研鑽を行うことについての医師の申告と上司の確認(その記録)
通常勤務と明確に切り分ける(突発的な場合を除き診療等を指示しない、服装等)

厚生労働省医療政策研修会「医師の働き方改革について」から抜粋

医師の働き方改革の検討会では、以上のような考え方と手続きが示されており、医師の研鑽が労働時間として取り扱われるかどうかは、医師本人、上司、使用者が明確に認識できるようにすることがポイントです。また検討会では、『医師の研鑽が労働に該当するか否かは、客観的に定まるものであり、当該研鑽が本来業務や本来業務に不可欠な準備行為・後処理に該当する場合や、上司や使用者から義務付けられ、又は実施することが余儀なくされている場合には、手続きの如何を問わず、労働に該当する。』と提言しています。以上の考え方にもとづいて技師を対象とした場合、技師の研鑽は、放射線技術の専門性や技術の進歩を踏まえ、その技師の経験や業務、病院が求める水準によって業務であるか否かが判断されるでしょう。具体的な範囲を決定するためには、上司が現場で必須と考える業務を指示することが不可欠であるといえます。また、将来的には、医療環境の変化や技師の労働状況の改善を考慮し、より具体的で明確な基準や手続きを整備することが求められるでしょう。技師の研鑽に関する情報共有や意見交換の場を設けることで、研鑽活動を促進することも重要です。

部内勉強会と残業について

部内勉強会は、放射線技師が所属する医療機関内で開催される学術的な集まりです。部内勉強会では、最新の研究成果や技術の共有、症例検討などが行われます。一般的に部内勉強会が業務時間内に実施される場合は残業とはみなされません。ただし、例外的な事情や特定の症例の討論によって勉強会が長引く場合は、残業として取り扱われることがあります。部内勉強会は、医師の働き方改革の検討会では、研鑽の類型の一つとして位置付けられています。したがって、上述の自己研鑽と同様に、部内勉強会が上司や使用者から義務付けられ、又は実施することが余儀なくされている場合には業務に該当し、勉強会が長引けば残業になるでしょう。

研究と残業について

日常の撮影業務以外の研究は、診療放射線技師が自身の専門領域において研究活動を行うことを指します。例えば、放射線技術の新しい手法の開発や技術評価などが含まれます。通常、このような研究活動は業務時間外に行われることが一般的です。そのため、日常業務以外の研究は通常は残業とはみなされません。ただし、研究活動が放射線技師の本来の業務に直接関連し、日常業務に支障をきたす場合は、残業として考慮されることもあります。研究も先と考え方は同じです。結局のところ、研究が上司や使用者から義務付けられ、又は実施することが余儀なくされているかどうかが業務や残業となるかの判断基準となるでしょう。

まとめ

医療業界における自己研鑽の基準は曖昧であり、これまで労働に該当するか否かが非常に分かりにくい業務体制が長年続いてきました。この曖昧さを利用して、長時間労働が横行したり、逆に十分な業績がないにもかかわらず残業代として申請されるなど、不公平な状況が蔓延し、業界全体が疲弊している状況でした。今回の医師の働き方改革の検討会では、適切な運用の確保の中で、『医療機関ごとに、研鑽に対する考え方、「労働に該当しない研鑽」を行うために所定労働時間外に在院する場合の手続き、「労働に該当しない研鑽」を行う場合には診療体制に含めない等の取扱いを明確化し、書面等に示す。』ことが示され、『医師だけでなく、共に働く他職種も含めて当該手続き等を周知する。』ことが謳われています。医療現場で働く全てのスタッフがこの手続きについて理解し、遵守することで、業務の公平性と透明性が確保されます。

また注意事項として、病院側が学会参加の旅費などの諸経費を支給したからといって、それが労働に該当するとは限りません。なぜなら、病院が学会参加費を福利厚生の一環として支給することもあり、旅費や諸経費の支給が労働時間に該当するかどうかの判断とは直接関係しないからです。

今回の医師の働き方改革は、長年問題となってきた自己研鑽の業務体制について、大きな前進をもたらすことを期待しています。各医療機関が明確な基準と手続きを示し、全スタッフがその内容を共有することで、業務の適正化と公正な労働環境の実現に向けて一層の進展が期待されます。

 

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