1af7d519f24fb5bd3036a78bc1763086_s 単純X線検査に外来や病棟から車椅子で検査室に来られる患者さん。全介助でまったく立てない方もいらっしゃれば、検査室に入室すると普通に独歩で健常者とほとんど変わらない患者さんもいらっしゃいます。医師や看護師にしてみれば、上記の患者さんは、すべて車椅子の患者さんなのですが、我々診療放射線技師にとっては、独歩可能と全介助の患者さんたちを『車椅子の患者さん』と一括りにするわけにはいきません。

とくに検査の効率や安全性という視点でみたとき、患者さんひとりにどれだけの検査時間を費やすのか?  何人技師が必要なのか? あらかじめ予測して準備しておくことは重要なことです。
 
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車椅子分類

 では、まず車椅子で検査に来る患者さんをみてみましょう。車椅子の患者さんを撮影しているとわかると思いますが、車椅子の患者さんは、3つのパターンに分類できます。

A. 介助の必要がなく、ひとりで普通に歩くことができる。
B. 少し手を貸したり、何かに捕まれば立つことができる。
C. 自分の力で立ったり、移動したりすることが全くできない。

 車椅子Aの場合、循環器疾患の患者さんや術後の患者さんなどが該当します。病室のみ歩行が許されている期間があり、そのような方は、病室から検査室まで車椅子でいらっしゃって、検査室内では普通に歩けます。我々が一番拍子抜けするのが、このパターンですwww。車椅子だから、介助を想定し、患者さんが転んだり、倒れたりしないか気合を入れて検査に臨むも、名前をお呼びすると、ひとりですたすた歩いてくるからです。

 車椅子Bの場合、腹痛や怪我など救急で来られた方や、術直後で痛みがまだ残っている方などが該当します。技師は、患者さんに注意を払いながら、鉛防護エプロンを着用して、ひとりで撮影することが可能です。

 車椅子Cの場合、要介助の患者さんで、状態がよくない方、麻痺で下肢に力が入らない方などが該当します。臥位の撮影では、患者さんを撮影台に寝かせる必要があり、技師2名で患者さんを持ち上げて移動します。座位の撮影では、1人の技師がポジショニングを担当し、患者さんを保持、もう1人の技師が、管球を動かして、撮影条件や照射野を設定して撮影します。

 以上のことをまとめると、車椅子患者に対する技師の撮影体制は、

車椅子A: 技師ひとりで撮影可能。
車椅子B: 技師ひとりで撮影可能。必ず鉛防護衣を着用する
車椅子C: 2名以上の技師が必要。必ず鉛防護衣を着用する

ということになります。
車椅子Aでは鉛防護衣の着用はどちらでもよいと思います。また、車椅子の患者さんは、起立性の貧血で転倒することがありますので、常に患者さんの転倒を念頭において撮影に臨むことは基本です。

車椅子分類の使用方法

 X線受付に来られた患者さん本人または介助者に、あらかじめ作成した車椅子ABC分類のイラストをお見せして、患者さんが車椅子ABCのどれに該当するかお聞きし、依頼票に車椅子の分類を記載しておきます。そして、撮影担当技師は、記載された車椅子分類を確認し、撮影前に鉛防護衣を着用したり、支援の技師を確保してから撮影にはいります。

 車椅子分類は、検査時間と技師の必要人数、鉛防護衣の着用の有無を把握することができます。車椅子患者のすべての方に、鉛防護衣を着用して、最大の支援体制を確保することは、医療安全という視点で考えると最高ですが、そのような体制を構築できる職場は非常に限られていると思います。実際は、限られた人員のなかで、検査効率も考え、最大の安全を確保するという、厳しい体制づくりを迫られます。

 この車椅子分類を使用すると、撮影担当以外の技師も、「○番撮影室の患者さんは、車椅子Aだから支援に行かなくても大丈夫だな。」とか、「○番撮影室の次の患者は、車椅子Cだから、もう少ししたら、支援に行かなくちゃ」と予測しながら、ゆとりをもって業務ができます。
また車椅子分類は、忙しい時間帯に車椅子の患者さんがいらっしゃって、何も準備しておかなくて、撮影が始まってから、慌てて支援の技師を呼んだり、鉛防護衣を取りに行くなどの無駄を省くことができ、検査効率を上げることが可能になります。みなさんも是非使ってみてください。

 

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