デジタル化やってはいけないこと
こんにちは

最近「デジタル化すれば、業務が楽になるはずだったのに…逆に仕事が増えている気がする」
こんな声を、放射線技師の現場でもよく聞きます。

医療現場では、PACSやRIS(放射線情報システム)、電子カルテ、Web予約システムなど、さまざまなデジタルツールが導入されています。しかし、「使い方」や「運用の仕方」次第では、デジタル化がかえって業務の負担を増やしてしまうこともあるのです。

今回放射線技師の現場でありがちな“やってはいけないデジタル化”の実例を紹介します。

紙の指示書を残したままRIS運用を始める

ありがちな事例
「RISに予約が入っていても、外来からは相変わらず紙の撮影指示書が送られてくる」
「紙が来ないと不安だから、結局指示書をプリントアウトして現場に持ってくる」

なぜダメなのか?
RISと紙の二重運用になると、入力ミスや確認漏れが発生します。
また、「紙と電子のどちらが正しいか」の確認に無駄な時間がかかることも。

解決策として
紙媒体を段階的に廃止するロードマップを作る。
医師側・看護師側にも電子指示の徹底を依頼し、共通ルールを設ける。

画像保存はPACS、レポートは紙で提出

ありがちな事例
「画像はPACSで保存するけど、レポートは紙にプリントアウトして外来に提出」
「レポート用紙に書いた内容を後でRISに再入力している」

なぜダメなのか?
一度記録した情報を再度入力するのは“二度手間”です。
記載内容の齟齬や、時間的ロス、労働生産性の低下にもつながります。

解決策として
・放射線レポートはPACSまたはRIS上で完結させる。
・手書きから入力への移行トレーニングや、テンプレート整備を推進する。

目的不明のデジタルツール導入

ありがちな事例
「上層部がAI読影サポートを導入したけど、どこで使うのか分からない」
「チェックだけ増えて、実質的な業務負担が増えた」

なぜダメなのか?
現場のニーズやワークフローを無視したデジタル化は、「使われないツール」になります。
逆に管理項目が増え、確認作業が煩雑になるリスクも。

解決策として
・導入前に現場ヒアリングを行い、必要性と課題を明確化する。
・試行期間を設け、評価後に正式導入を検討する。

情報共有が分散しすぎる

ありがちな事例
「LINE、グループウェア、紙の掲示板、全部で業務連絡が来る」
「誰がどの連絡を見たのか分からない」

なぜダメなのか?
・情報があちこちに分散すると、確認漏れ・伝達ミスの原因に。
・結局、全員に口頭で再確認というアナログな手間が発生します。

解決として
・情報共有ツールは1本に絞る
・「連絡は〇〇に統一」と明文化し、周知徹底する

運用ルールが曖昧なままスタート

ありがちな事例
「予約変更は口頭でOK?メールで?RISで?」
「電子カルテとPACSのどちらが優先か誰も分からない」

なぜダメなのか?
デジタルツールは“ルールがあって初めて機能する”ものです。
ルールがないと、人によって使い方が違い、現場が混乱します。

解決として
・明確な運用マニュアルを作成し、全体で共有する。
・定期的な見直しとフィードバックの場を設ける。

デジタル化は“手段”であって“目的”ではない

放射線技師の業務を効率化し、患者対応の質を高めるためには、目的を見失わないデジタル化が重要です。
紙とデジタルの二重運用、運用ルールの不徹底、目的不明のシステム導入——これらはすべて、「仕事が増えるデジタル化」の代表例です。

現場の声を反映しながら、無理のない形で段階的に移行する。
それが、成功する医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の第一歩です。

 

放射線技師.com