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「それは主任の仕事ではありませんか?」

上司から何かを頼まれたとき、そう返したことはありませんか?

「私はまだ主任ではありません」
「そこまでの給料はもらっていません」
「それは管理職が考えることでしょう」

確かに、その通りかもしれません。役職によって責任の範囲は異なりますし、給与も違います。自分の職務範囲を明確にすることは、決して間違った考え方ではありません。

しかし、その考え方によって、せっかくの成長の機会を逃しているとしたら、どうでしょうか?
今回は、私が確信している昇進の機会と人材育成についてお話ししたいと思います。

主任の仕事ができるようになったら、主任になれる?

皆さんは、昇進とはどのようなものだと考えていますか?
一般的には、次のようなイメージではないでしょうか。

一般的な昇進のイメージ

一般職員の技師として十分な能力を身につける
↓
主任に昇進する
↓
主任としての仕事を覚える
↓
主任として成長する

一見すると、非常に合理的な考え方です。まず、今の仕事を完璧にできるようになる。そして、その能力が認められて昇進する。しかし、実際に評価されやすい昇進のプロセスは少し違うのです。

実際に評価されやすい昇進のプロセス

一般職員の技師でありながら主任の視点で仕事をする
↓
主任に必要な能力や判断力が身につく
↓
上司が「この人なら主任を任せられる」と判断する
↓
主任に昇進する
↓
正式な権限を得ることで、これまで以上に仕事がしやすくなる

この二つの違いは、非常に重要なポイントですが、その違いがわかりますか?

前者は、「役職を与えられてから、その役職の仕事を覚える」という考え方です。

一方、後者は、「その役職に必要な能力を示しているから、役職が与えられる」という考え方です。

もちろん、すべての組織がこのように昇進を決めているわけではありません。しかし、管理職の立場からすると、まだ一度も主任としての視点で仕事をしたことがない人より、すでに主任に近い仕事をしている人の方が、安心して任せられるのではないでしょうか。

一般職員の技師として優秀なら、主任としても優秀なのか?

例えば、一般撮影の技術が非常に優秀な診療放射線技師がいたとします。撮影技術は申し分なく、検査も正確で、患者対応にも問題がありません。
では、その人は主任として適任でしょうか?

必ずしもそうとは限りません。主任に求められるのは、撮影技術だけではありません。スタッフ間の調整、業務改善、後輩の育成、問題が発生したときの判断など、一般職員とは異なる能力が必要になります。

つまり、一般職員として優秀であることと、主任として優秀であることは、必ずしも同じではないのです。これは、管理職への昇進でも同様です。主任として優秀だからといって、必ずしも管理職として優秀とは限りません。

では、主任になったことがない人の、主任としての能力をどうやって評価すればよいのでしょうか?

役職に就く前から、その役職の仕事は始まっている

ここで、二人の診療放射線技師を考えてみます。どちらも経験10年の一般職員で、撮影技術や検査能力に大きな差はありません。ある日、放射線部門で検査の待ち時間が長くなっていることが問題になりました。主任から、改善策を考えてほしいと依頼されます。

Aさんの反応
「それは主任が考える仕事ではありませんか? 私は自分の検査をきちんとやっています。」

Bさんの反応
「わかりました。まず、どこで待ち時間が発生しているのか調べてみます。」

Bさんは検査件数や時間帯を調べ、スタッフの意見を聞き、改善案をまとめました。もちろん、最初からうまくいくわけではありません。改善案に問題があったり、他のスタッフから反対されたりすることもあるでしょう。しかし、その過程でBさんは、主任に必要な能力を少しずつ身につけていきます。

問題を発見する力。
原因を分析する力。
周囲の意見を聞く力。
改善策を考える力。
そして、結果に責任を持つ姿勢。

一方、Aさんは一般職員としての仕事を確実にこなしています。それ自体は十分に評価されるべきことです。

では、翌年、主任のポストが空いたとします。あなたが管理職なら、どちらを主任に推薦するでしょうか?
おそらく、多くの管理職はBさんを候補として考えるのではないでしょうか?
なぜなら、Bさんはすでに主任に必要な仕事の一部を経験し、その能力を示しているからです。

主任になったから主任の仕事をするのではなく、主任の仕事をしているから主任にふさわしいと評価される。

昇進とは、必ずしもこれから始める仕事への期待だけではありません。すでに発揮している能力や、担っている役割を正式に認めることでもあるのです。

「役が人を作る」は本当なのか?

昔から「役が人を作る」とか「肩書きが人を成長させる」という言葉があります。責任ある立場を与えられることで、人はその立場にふさわしい能力や考え方を身につけていくという意味です。確かに、そのような側面はあるでしょう。主任になったことで責任感が強くなったり、管理職になったことで組織全体を見るようになったりすることはあります。しかし、私はもう一つ、重要な効果があると考えています。

それは、役職が与えられることで、それまでよりも仕事がしやすくなるということです。

例えば、一般職員のBさんが業務改善を提案したとします。その内容が合理的であっても、周囲からは次のように思われるかもしれません。
「なぜ、あなたにそんなことを言われなければならないの?」
「それは主任が決めることでしょう」

ところが、Bさんが主任になればどうでしょうか?
同じ提案でも、周囲の受け止め方が変わる可能性があります。主任として業務を調整する権限が与えられ、他の部署との交渉もしやすくなるかもしれません。Bさんの能力が、昇進した瞬間に突然向上したわけではありません。役職という権限を得たことで、それまで持っていた能力を発揮しやすくなったのです。

もちろん、役職があれば必ず周囲が協力してくれるわけではありません。信頼関係や説明能力も必要です。それでも、組織における正式な権限は、仕事を進めるうえで大きな意味を持ちます。そう考えると、「役が人を作る」という言葉は、少し違った見方もできるのではないでしょうか?

役職が人を育てるだけではなく、育った人が能力を発揮するために役職が必要になる。

私は、この側面も非常に大きいと考えています。

「給料をもらっていないから、やりません」は正しいのか?

ここで、少し難しい問題を考えてみます。主任ではない職員に、主任に近い仕事を依頼したとします。すると、次のように言われました。

「主任の給料をもらっていないので、そこまでやる必要はないと思います」
この意見は間違っているのでしょうか?

私は、完全に間違っているとは思いません。仕事には責任が伴います。本来、管理職が負うべき責任を、権限も報酬も与えずに一般職員へ押し付けることは適切ではありません。

例えば、人事評価や勤務管理に関する最終的な判断を、一般職員に丸投げするようなことは問題です。また、上司が自分の仕事を減らすためだけに部下へ仕事を押し付け、それを人材育成と呼ぶのであれば、それも間違っているでしょう。しかし、ここで考えてほしいことがあります。

「今の給料に見合う仕事しかしない」という考え方で、次の給料に見合う能力を、いつ、どこで示すのでしょうか。

昇進してから初めて上の仕事に挑戦する。それも一つの方法です。しかし、昇進する前から上の仕事に挑戦している人と比べたとき、どちらが評価されやすいでしょうか?上司の立場からすると、すでに主任に必要な能力を示している人の方が、安心して主任を任せられるのではないでしょうか?

これは、無償で際限なく働くべきだという話ではありません。労働時間や責任の範囲は適切に管理される必要があります。

そのうえで、今の役職に必要な仕事と、自分の成長につながる仕事を、すべて同じ基準で考えてしまうのはもったいないと思うのです。

しかし、ここに大きな落とし穴がある!?

ここまで読むと、こう思う人がいるかもしれません。
「なるほど。つまり、上の仕事を積極的に引き受ければ、昇進できるということですね。」
しかし、そう単純な話ではありません。

ここに、昇進と人材育成を考えるうえで、大きな落とし穴があります。

それは、

「上の仕事を積極的に引き受ける人」と「上の仕事を適切に遂行できる人」は、必ずしも同じではない。

ということです。
例えば、二人の職員がいたとします。

Cさんは、非常に積極的な職員です。

主任が担当している仕事にも自ら手を挙げ、業務改善にも熱心に取り組んでいます。会議でも積極的に発言し、周囲を引っ張ろうとします。上司から見れば、意欲的で頼もしい存在に映るかもしれません。しかし、Cさんには問題がありました。

自分の考えを優先し、周囲の意見をあまり聞きません。業務改善を進めるときも、他のスタッフとの調整が不十分です。上司への報告も後回しになりがちで、結果として職場に混乱を生じさせることがあります。

一方、Dさんは、Cさんほど積極的に前へ出るタイプではありません。自分から何でも引き受けるわけではなく、会議でも必要以上に発言することはありません。しかし、問題が発生したときには、冷静に状況を整理します。自分の考えだけで判断せず、関係するスタッフの意見を聞き、必要に応じて上司へ相談します。そして、周囲と協力しながら問題を解決していきます。

さて、あなたが管理職なら、どちらを主任に推薦するでしょうか?
積極的に仕事を引き受けるCさんでしょうか?
それとも、周囲と協力しながら適切に仕事を進めるDさんでしょうか?

私は、少なくともこのケースでは、Dさんの方が主任として適任である可能性が高いと思います。
なぜでしょうか?

主任に求められるのは、単に仕事をたくさん引き受けることではないからです。主任には、自分の成果だけでなく、組織全体の成果を考えることが求められます。自分一人が頑張るのではなく、周囲の職員が能力を発揮できるようにすることも重要です。

仕事を引き受ける積極性と、仕事を適切に遂行する能力は、別のものなのです。

そして、ここには管理職が陥りやすい、もう一つの落とし穴があります。それは、「積極的に仕事を引き受ける職員」を「優秀な職員」だと評価してしまうことです。

もちろん、積極性は重要な評価要素です。しかし、それだけで昇進を判断してしまうと、仕事を引き受けることには熱心でも、組織をまとめる能力が不足している人を管理職にしてしまう可能性があります。

逆に、目立つ行動は少なくても、周囲から信頼され、適切に判断できる人を見落としてしまうかもしれません。
では、何を評価すべきなのでしょうか?

私は、次のように考えます。

「上の仕事をやろうとしているか」ではなく、「上の立場に必要な判断や行動ができているか」を評価する。

これは、昇進を希望する職員にとっても、昇進を判断する管理職にとっても、重要な視点ではないでしょうか?

管理職にも責任がある

ここまで、一般職員の立場から考えてきました。しかし、この問題は職員だけの問題ではありません。管理職にも大きな責任があります。例えば、上司が部下に主任の仕事を任せたとします。部下は努力して成果を出しました。ところが、上司はその成果を評価せず、次から次へと仕事を任せるだけだったらどうでしょうか?

「頑張っても給料は変わらない」
「仕事が増えるだけで、何も得られない」
そう感じるのは当然です。

そのような職場で、積極的に上の仕事を引き受ける人が増えるでしょうか?

おそらく難しいでしょう。部下に挑戦を求めるのであれば、管理職はその挑戦を適切に評価しなければなりません。また、失敗したときに責任をすべて部下へ押し付けるようでは、誰も新しい仕事に挑戦しなくなります。

部下には挑戦する姿勢を求め、上司には挑戦できる環境をつくる責任がある。

この両方がそろって初めて、人材育成は機能するのではないでしょうか?

そして、もう一つ忘れてはいけないことがあります。昇進の機会は、誰にでも公平に与えられる必要があります。上司のお気に入りだけが重要な仕事を任され、その経験を理由に昇進するのであれば、それは公平な評価とはいえません。管理職は、能力を評価するだけでなく、能力を示す機会を公平に提供する必要があるのです。

昇進とは、何に対する評価なのか?

そもそも、昇進とは何でしょうか?
長年勤めたことへのご褒美でしょうか?
今の仕事を完璧にこなしたことへの表彰でしょうか?
それとも、次の役職を任せられる能力があると認めることでしょうか?

私は、最後の考え方が重要だと思います。もちろん、経験年数や現在の仕事の成果も評価すべきです。しかし、主任を選ぶのであれば、主任としての適性を評価しなければなりません。管理職を選ぶのであれば、管理職としての適性を評価する必要があります。そして、その適性を判断するためには、実際にその役職に近い仕事を経験してもらうことが有効です。

一般職員の技師が主任の視点で仕事をする。主任が管理職の視点で仕事をする。管理職が、さらに上の経営的な視点で組織を考える。その経験を通じて能力が育ち、周囲からの信頼が形成される。そして、正式な役職が与えられることで、より大きな権限を持って仕事ができるようになる。

この繰り返しが、組織における人材育成の一つの理想的な形ではないでしょうか?
ただし、上の役職を目指すことだけが成長ではありません。診療放射線技師には、専門技術を深めるという成長の方向もあります。管理職を目指さない職員が、成長意欲の低い職員というわけではありません。大切なのは、自分がどのような能力を身につけ、どのような仕事をしたいのかを考えることです。

「役が人を作る」の前に、考えてほしいこと

「役が人を作る」
確かに、役職を与えられることで成長する人はいます。しかし、役職が与えられるのを待っているだけでは、いつまでたっても機会が訪れないかもしれません。

反対に、今の役職にとらわれず、一つ上の視点で仕事をしている人は、すでに次の役職に必要な能力を身につけ始めています。そして、その能力が評価され、正式な役職が与えられれば、これまで以上に仕事を進めやすくなるでしょう。

役職に就いたから、その仕事をするのではない。
その仕事ができると認められたから、役職が与えられる。

もちろん、すべての組織がこのように機能しているわけではありません。能力があっても昇進できないこともありますし、役職に就いてから大きく成長する人もいます。それでも、自分の可能性を広げるという意味では、今の役職だけを基準に仕事を選ぶことが、本当に得策なのか考えてみる価値はあると思います。

最後に、二つの問いを投げかけたいと思います。

一般職員技師の皆さんへ。

あなたが「それは私の仕事ではありません」と断った仕事は、本当に引き受けるべきではない仕事だったのでしょうか?
それとも、次のステージへ進むためのチャンスだったのでしょうか?

そして、管理職の皆さんへ。

あなたは部下に、一つ上の仕事へ挑戦する機会を与えていますか?
そして、その挑戦を正当に評価していますか?

「役が人を作る」のではなく、「人が役をつかみ取り、役がその人の可能性を広げる」。

そんな組織をつくることができれば、職員も組織も、今よりもっと成長できると思います。

放射線技師.com