
「人が足りません」
医療現場で、よく耳にする言葉です。
「忙しくて手が回らない」
「もう1人いれば、もっと余裕を持って仕事ができる」
「この業務は、本来うちの部署がやる仕事ではない」
「人を増やしてもらわなければ、これ以上は対応できない」
どれも、現場で働く職員の切実な声でしょう。実際、人員不足によって業務に支障が生じたり、医療安全上のリスクが高まったりすることもあります。必要な人員を適切に配置することは、組織の重要な責任です。
しかし、ここで少し考えてみてください。
忙しいということは、本当に人が足りないということなのでしょうか?
人を増やす前に、仕事のやり方を変えることはできないのでしょうか?
そもそも、その仕事は本当に必要なのでしょうか?
もし、毎日1時間かかっている仕事を、仕組みの見直しによって15分に短縮できたらどうでしょう。あるいは、その仕事自体が発生しないようにできたら?
人員を増やさなくても、職員の負担を減らせるかもしれません。反対に、ある部署の仕事を減らしたつもりでも、別の部署の仕事が増えているだけということもあります。
「自分の仕事が減ったこと」と「組織全体の仕事が減ったこと」は、同じではありません。
今回は、診療放射線技師の日常業務を題材に、私たちが当たり前のように続けている仕事や人員配置について考えます。そして、最後にはもう一歩踏み込んで、そもそも業務改善とは何を目的にするべきなのかを考えてみたいと思います。
目次
- 1 ケーススタディ:撮影室のひとつを入院患者専用にしたら?
- 2 ケーススタディ:受付担当者の勤務時間を延長した。これは業務改善なのか?
- 3 仕事を減らすことと、仕事を移すことは違う?
- 4 ケーススタディ:2時間のIVR研修。本当に2時間必要ですか?
- 5 ケーススタディ:CT室は2つなのに、なぜ技師が3人必要なのか?
- 6 その電話、本当に必要ですか?
- 7 「前からそうしている」は必要な理由になりますか?
- 8 効率化すると、仕事が増えることもある!?
- 9 人を減らすことが、業務改善の目的なのか?
- 10 あなたが現場の技師なら? 技師長なら? 部長なら?
- 11 その改善、本当に効果がありましたか?
- 12 「忙しいから人が必要」は、思考停止の言葉になっていないか?
- 13 業務改善は、人を減らすためではない。
ケーススタディ:撮影室のひとつを入院患者専用にしたら?
ある病院の一般撮影部門では、外来患者も入院患者もX線受付を経由してから検査を受けています。受付では患者の到着を確認し、検査内容を把握して、撮影室へ案内します。入院患者も同じように受付を経由するため、病棟から搬送されてきた患者や付き添いの看護師、看護補助者が受付前で待つことがあります。
そこで、ある技師が提案しました。
「撮影室のひとつを入院患者専用にして、病棟から直接来てもらえばよいのではないでしょうか?」
なるほど。
入院患者が受付を経由する必要がなくなれば、受付担当者の業務は減ります。患者の移動距離や待ち時間も短縮できるかもしれません。病棟からの搬送もスムーズになる可能性があります。一見すると、合理的な改善案です。
では、ここで質問です。
あなたは撮影室のひとつを入院患者専用化にすることに賛成ですか?
少し考えてみてください。仮に、入院患者の撮影が少ない時間帯があったとします。入院患者専用の撮影室は空いているのに、ほかの撮影室では外来患者が順番を待っている。このような状況が発生したらどうでしょうか?
また、受付を通らなくなった入院患者の到着は、誰がどこで知ることができるのでしょうか?
受付の業務が減った代わりに、入院患者専用撮影室の技師の業務が増えているだけかもしれません。
さらに、病棟から直接撮影室に来る運用に変更したことで、緊急時の病棟側の搬送調整が複雑になる可能性もあります。
つまり、受付の負担が減ったという理由だけでは、病院全体として改善したとは判断できないのです。
では、どうすればよいのでしょうか?
例えば、入院患者を専用の撮影室で優先的に撮影しながら、空き時間には外来患者にも対応する方法があります。あるいは、患者の到着情報を共有する仕組みを整えることで、受付を経由しなくても必要な確認ができるかもしれません。もちろん、これらが実際に有効かどうかは、患者数や検査件数、搬送方法、撮影室の稼働状況によって異なります。大切なのは、最初から「専用化するか、しないか」という二者択一で考えないことです。
「入院患者の受付をなくすこと」が目的なのでしょうか?
それとも、「患者の流れを改善し、病院全体の負担を減らすこと」が目的なのでしょうか?
目的が違えば、選ぶべき方法も変わってきます。
ケーススタディ:受付担当者の勤務時間を延長した。これは業務改善なのか?
次のケースを考えます。
ある放射線部門では、受付担当者が15時まで勤務していました。そのため、15時以降は診療放射線技師が受付業務を兼任していました。患者の受付、電話対応、検査案内などを、撮影業務の合間に行っていたのです。当然、技師からは負担を感じる声がありました。そこで、受付担当者の勤務時間を終業時刻の17時まで延長することになりました。これにより、15時以降も受付担当者が対応できるようになり、技師が受付業務を行う必要はなくなりました。
技師にとっては、歓迎すべき改善でしょう。しかし、ここで一つ質問したいことがあります。
「この変更によって、病院全体では何が改善したのでしょうか?」
受付担当者の勤務時間を延長したのですから、当然、人件費は増加します。一方、技師の人数は変わっていません。技師が担当していた仕事を受付担当者に移したことで、技師の負担は減りました。しかし、仕事そのものがなくなったわけではありません。
つまり、業務を減らしたのではなく、業務を移しただけとも考えられます。
では、この変更は間違いだったのでしょうか?
決してそうとは限りません。技師が受付業務から解放されたことで、検査待ち時間が短縮したかもしれません。画像処理や検査準備に集中できるようになったかもしれません。時間外勤務が減った可能性もあります。あるいは、受付と検査を同時に担当する負担がなくなり、医療安全上のリスクが低減したかもしれません。そのような効果が得られたのであれば、増加した人件費にも十分な意味があるでしょう。
しかし、もし何も変わっていなかったらどうでしょう。技師が受付をしなくなった。その代わりに受付担当者の人件費が増えた。検査件数も、患者の待ち時間も、時間外勤務も、特に変化していない。もちろん、職員の疲労軽減や突発的な検査への対応余力など、数字に表れにくい効果もあります。それでも、改善策を評価するためには、何が変わったのかを確認する必要があります。
ここで考えてほしいのです。
「技師が受付業務をしなくてもよくなったこと」が成果なのでしょうか?
それとも、「技師が専門業務に使える時間が増え、その結果として何らかの価値が生まれたこと」が成果なのでしょうか?
この違いは、非常に大きいと思います。
仕事を減らすことと、仕事を移すことは違う?
先ほどの受付業務の話をもう少し考えてみます。
例えば毎日2時間、技師が受付業務を行っていたとします。その2時間を受付担当者に移した場合、技師の業務時間は2時間減ります。しかし、病院全体で見れば、受付業務に必要な2時間は変わりません。もちろん、専門職と事務職員が適切に役割分担することで、組織全体の生産性が高まることはあります。問題なのは、業務を移したことだけで改善が完了したと思ってしまうことです。
では、もし受付業務そのものを減らせたらどうでしょうか。
例えば、患者の到着確認を効率化する。
検査の進行状況を共有する。
同じ情報を複数回入力する作業をなくす。
問い合わせが発生しにくい案内方法に変更する。
こうした工夫によって、受付担当者も技師も、双方の仕事を減らせる可能性があります。つまり、業務改善には異なる段階があります。
「誰がやるか」を変える改善。
「どうやるか」を変える改善。
そして、「そもそもやらなくてもよい方法はないか」を考える改善。
この3つは、似ているようで大きく異なります。私たちは、誰が担当するかという議論に時間を費やしがちです。しかし、その前に考えるべきことがあるのではないでしょうか?
「そもそも、その仕事は必要なのか?」
ケーススタディ:2時間のIVR研修。本当に2時間必要ですか?
次は新人教育について考えてみます。
IVRでは、1件の検査に2,3時間程度かかることがあります。新人技師が研修する場合、検査開始から終了まで参加する方法は一般的です。しかし、少し考えてみてください。2時間のうち、技師が実際に装置を操作したり、画像処理を行ったりする時間は、合計しても30分に満たない場合があります。残りの時間は、医師の手技を見学したり、検査の進行を待ったりしています。
では、ここで質問です。
「2時間の研修で、実際に何分学んでいるのでしょうか?」
もちろん、操作していない時間が無駄というわけではありません。初めてアンギオ検査に参加する新人であれば、検査全体の流れを理解することは重要です。清潔操作やスタッフ間の連携、患者の状態変化への対応など、見学することで学べることもあります。しかし、すでに検査の流れを理解している研修者が、毎回2時間すべてに参加する必要はあるのでしょうか。
例えば、装置操作を習得することが目的なら、実際に操作する場面を中心に研修できないでしょうか。画像処理を学ぶことが目的なら、過去の症例画像を用いた演習でも学べることがあるかもしれません。まれなトラブルへの対応であれば、実際の発生を待つよりも、シミュレーションによる教育の方が効果的な場合もあるでしょう。研修者の習熟度に応じて、検査全体を見学する段階と、特定の技術を重点的に習得する段階を分ける方法も考えられます。ただし、検査の進行に伴う判断力やチームの動きを理解するためには、実際の検査に継続して参加する経験も必要です。大切なのは、研修時間を短縮すること自体を目的にしないことです。
「研修者が2時間その場にいたこと」と「2時間分の能力が身についたこと」は、同じではありません。
私たちは、研修時間をどれだけ確保したかに注目しがちです。しかし、研修の目的は時間を消費することではありません。
何を理解し、何ができるようになったのか。
本来、評価すべきなのはそこではないでしょうか。そして、研修をより効果的にできれば、指導者と研修者の双方に、新たな時間を生み出せる可能性があります。教育の質を高めることと、教育に使う時間を効率化することは、必ずしも対立するものではないのです。
ケーススタディ:CT室は2つなのに、なぜ技師が3人必要なのか?
次は、人員配置について考えます。
ある病院にはCT検査室が2室あります。そこには、通常3人の診療放射線技師が配置されています。2人は、それぞれのCT装置を担当します。では、3人目の技師は何をしているのでしょうか。
患者の案内。
電話対応。
緊急検査の依頼対応。
検査時間の調整。
画像処理。
PACSへの画像転送や確認。
どれも、CT検査を円滑に進めるために必要な業務です。3人目の技師がいることで、各検査室の担当者は撮影に集中できます。緊急検査への対応もスムーズになるでしょう。
しかし、ここで質問します。
「これらの業務は、すべて診療放射線技師でなければできないのでしょうか?」
もちろん、検査の優先順位や実施方法の判断、専門的な画像処理、画像の確認など、技師の専門性が必要な業務があります。一方、定型的な患者案内や電話の取次ぎ、予約情報の確認などは、適切な教育と権限のもとで、ほかの職種が担当できる場合もあります。
では、3人目の技師を事務職員に変更すればよいのでしょうか?
ここでも、そう簡単には結論を出せません。緊急検査が重なった場合、2人の技師だけでは対応できないかもしれません。造影検査で予期しない事態が発生したとき、3人目の技師が重要な役割を果たすこともあるでしょう。患者対応や画像処理を含めた全体の業務量によっては、3人配置が合理的な可能性も十分あります。したがって、CTが2室だから技師も2人でよい、という単純な話ではありません。
しかし、だからこそ考えてみたいのです。
「3人目の技師が必要な理由を、具体的に説明できるでしょうか?」
そして、もう一つ。
「現在3人で行っている仕事は、運用を見直しても3人必要な仕事なのでしょうか?」
その電話、本当に必要ですか?
CT室では、さまざまな問い合わせの電話がかかってきます。
「この患者さんのCTは、何時ごろになりますか?」
「次の患者を搬送してもよいですか?」
「緊急CTをお願いしたいのですが、いつできますか?」
「先ほどの検査画像は、もう見られますか?」
「予約枠を開けてもらえますか?」
電話が鳴れば、誰かが対応しなければなりません。検査中の技師が電話に出れば、作業が中断します。そのため、電話対応を担当する3人目の技師が必要だという考え方も理解できます。
では、ここで少し視点を変えます。
「電話対応を効率化する」のではなく、「電話がかかってこない仕組み」を考えることはできないでしょうか?
例えば、検査の進行状況を病棟や外来と共有できれば、「何時ごろになりますか?」という問い合わせは減るかもしれません。患者搬送のタイミングを通知できれば、「今から搬送してよいですか?」という確認も減る可能性があります。画像がPACSで閲覧可能になったことを依頼元が把握できれば、「画像はまだですか?」という電話も減るでしょう。もちろん、患者の状態に応じた緊急調整や、医師との直接的な相談が必要な電話までなくせるわけではありません。しかし、問い合わせの中には、情報が共有されていないことによって発生しているものもあるはずです。つまり、情報共有の仕組みを改善することで、問い合わせ自体を減らせる可能性があります。
ここで重要なのは、次の違いです。
「電話が多いから、電話対応の人を増やす」
という考え方と、
「なぜ電話が多いのかを調べて、電話を減らす」
という考え方。
どちらも業務改善につながる可能性があります。しかし、問題の原因にまで踏み込んでいるのは、どちらでしょうか?
私たちは、目の前の仕事を効率よく処理することに慣れています。ところが、その仕事がなぜ発生しているのかについては、意外と考える機会が少ないのではないでしょうか。
忙しい仕事を上手にこなすことと、忙しくならない仕組みをつくることは、まったく違うのです。
「前からそうしている」は必要な理由になりますか?
ここまで、一般撮影、受付、アンギオ研修、CTの人員配置について考えてきました。
これらの事例には、共通する特徴があります。それは、長年続けられてきた業務ほど、その必要性を疑う機会が少ないということです。
「昔から入院患者も受付を通っている」
「15時以降は技師が受付をすることになっている」
「アンギオ研修は検査開始から終了まで参加する」
「CTは2室だから、技師は3人配置する」
こうした運用には、導入された当時、それぞれ合理的な理由があったのかもしれません。しかし、その理由は今でも当てはまるのでしょうか。検査装置は進歩しています。情報システムも変化しています。患者数や検査件数、職員の構成も変わっています。
それなのに、仕事のやり方だけは10年前、20年前と同じままということはないでしょうか。
ここで、もう一つ質問です。
「なぜ、その仕事が必要なのですか?」
この質問に対して、「前からそうしているからです」という答えしか出てこなかったとしたら、一度見直す価値があるのかもしれません。もちろん、長年続けられている業務が、すべて非合理的というわけではありません。経験の積み重ねによって確立された、優れた運用もあるでしょう。
しかし、長年続いているという事実だけでは、現在も最適であることの証明にはなりません。
「昔から続けていること」と「今も続ける必要があること」は、同じではないのです。
効率化すると、仕事が増えることもある!?
ここで、少し違った視点から考えてみます。
ある部署で、業務改善によって技師1人分に相当する時間が生まれたとします。その時間を利用して、新しい業務を始めました。
患者への説明を充実させる。画像処理の内容を増やす。確認項目を追加する。新たな記録を作成する。
どれも、医療の質を高めるためには意味のある仕事かもしれません。しかし、こうして仕事を追加し続ければ、せっかく生まれた時間は再び埋まってしまいます。さらに、追加した業務が本当に必要なのかを検証しなければ、業務量は増える一方です。
業務改善によって余裕が生まれる。その余裕に新しい仕事を詰め込む。再び忙しくなる。
そして、また人が足りないと言い始める。
このようなことが起きていないでしょうか?
もちろん、空いた時間を新たな業務に活用すること自体は悪いことではありません。問題は、何のために新しい業務を追加するのかが曖昧なまま、仕事だけが増えていくことです。
ここで重要なのは、業務改善によって生まれた時間を、必ず別の仕事で埋める必要はないということです。
緊急検査への対応余力を確保すること。
職員が適切に休憩を取れること。
時間外勤務を減らすこと。
患者一人ひとりに落ち着いて対応できること。
これらにも、組織としての価値があります。
忙しくない時間があることと、無駄な人員がいることは、必ずしも同じではありません。
医療現場では、予期しない事態に対応できる余力も重要な資源なのです。
人を減らすことが、業務改善の目的なのか?
ここまで読んで、不安に感じた人もいるかもしれません。
「業務を減らすということは、結局、人員削減をしたいのではないか」
「効率化ばかり進めれば、職員の負担が増えるのではないか」
「何でも少人数で行うようになれば、医療安全が犠牲になるのではないか」
その懸念は理解できます。実際、十分な安全対策や教育体制を整えないまま人員を削減すれば、重大な問題につながる可能性があります。
しかし、業務改善の目的は、本来、人を減らすことだけではありません。例えば、CT室への問い合わせを減らすことができれば、その時間を画像の確認や検査の質の向上に使えるかもしれません。一般撮影の受付業務を効率化できれば、患者への対応を充実させられるかもしれません。アンギオ研修を見直せば、同じ研修時間でも、より多くの技術を習得できるかもしれません。つまり、業務改善には、人員を減らす以外にも多くの価値があります。そして、改善によって生まれた時間をどう活用するかは、組織として考えるべき問題です。
ここでお聞きします。
「私たちは、仕事を減らすために業務改善をするのでしょうか?」
「それとも、限られた人員で、より価値の高い仕事をするために業務改善をするのでしょうか?」
私は、後者の視点が重要だと思います。診療放射線技師という専門職の時間は、限られた資源です。その時間を、本当に専門性が必要な業務に使えているでしょうか?
あるいは、仕組みを変えればなくせる仕事に、多くの時間を費やしていないでしょうか?
専門性を必要としない仕事を技師が担当していること自体が、必ずしも間違いというわけではありません。しかし、限られた人員をどこに配置し、何を担当してもらうことが病院全体にとって最も価値があるのかは、考える必要があります。
業務改善とは、人の価値を減らすことではありません。人の価値を、より生かせる仕組みをつくることなのです。
あなたが現場の技師なら? 技師長なら? 部長なら?
ここで、立場を変えて考えてみます。
あなたが一般撮影を担当する技師だったとします。受付業務から解放されれば、撮影に集中できるようになります。あなたにとっては、明らかな改善かもしれません。
では、技師長だったらどうでしょうか?
受付業務の負担だけでなく、各撮影室の稼働状況、人員配置、教育、時間外勤務、患者の待ち時間なども考えなければなりません。
さらに、部長という立場ならどうでしょうか?
放射線部の運営だけでなく、他部署との役割分担や病院全体の人件費、医療サービスへの影響も考える必要があります。一つの部署が効率化した結果、別の部署の負担が増えているかもしれません。技師の仕事が減った結果、受付担当者の時間外勤務が増えているかもしれません。CT室の電話対応を減らしたつもりが、病棟側で新たな入力作業が必要になっているかもしれません。
ここで理解してほしいことがあります。
自分の仕事が楽になることと、組織全体が効率化することは、必ずしも同じではない。
ということです。もちろん、現場の負担を減らすことにも価値があります。管理者が経営効率だけを優先してよいわけでもありません。現場には現場にしか見えない課題があり、管理者には管理者だからこそ見える課題があります。重要なのは、それぞれの立場から見える問題を持ち寄り、組織全体として最も合理的な方法を考えることです。
「この部署にとってよいこと」が、「病院全体にとってもよいこと」なのか。
業務改善を考える際には、この視点を忘れたくありません。
その改善、本当に効果がありましたか?
最後に、もう一つ重要なことを考えます。
ある部署で、業務改善を行いました。
受付方法を変更しました。
研修方法を見直しました。
人員配置を変更しました。
職員からは「以前より働きやすくなった」という声が聞かれます。
では、これで改善は成功したと判断してよいのでしょうか?
もちろん、職員の負担感が減ったことは重要な成果です。しかし、変更によって何がどう変わったのかを確認しなければ、改善の効果は十分に説明できません。例えば、入院患者を専用撮影室で優先的に撮影する運用に変更したのであれば、患者の待ち時間や搬送時間、受付業務量、各撮影室の稼働率などを確認します。
受付担当者の勤務時間を延長したのであれば、増加した人件費と、技師の業務時間、時間外勤務、患者対応などへの効果を比較します。
アンギオ研修を変更したのであれば、研修時間だけでなく、習熟度や独り立ちまでの期間、安全性も評価します。
CTの人員配置を見直したのであれば、検査件数だけでなく、緊急検査への対応、電話件数、画像処理の遅延、職員の負担なども確認する必要があります。
そして、ここで大切なのは、改善を始める前に評価する項目を決めておくことです。後から都合のよい数字だけを集めても、改善の効果を正しく判断することはできません。また、数値が改善したからといって、必ずしも新しい運用だけが原因とは限りません。患者数の変化や検査内容、職員の経験、ほかの運用変更などが影響している可能性もあります。だからこそ、改善前後の変化を多面的に確認する必要があります。
「業務を変更したこと」と「業務が改善したこと」は、まったく違うのです。
「忙しいから人が必要」は、思考停止の言葉になっていないか?
ここまで読んで、少し不快に感じた人もいるかもしれません。
「現場の忙しさを理解していない」
「実際に人が足りないのだから、増員が必要なのは当然だ」
「仕事を減らせと言われても、必要な仕事ばかりだ」
その考え方は理解できます。
実際、現在の人員では安全かつ適切な医療を提供できないのであれば、増員を検討すべきです。業務改善によって、すべての人員不足を解決できるわけではありません。しかし、もう一つ考えてほしいのです。人員を増やしたとしても、仕事の仕組みが変わらなければ、同じ問題が繰り返されることはないでしょうか。
問い合わせが多いから、電話対応の人を増やす。
研修に時間がかかるから、指導者を増やす。
受付が忙しいから、受付担当者を増やす。
それぞれ合理的な対策かもしれません。
しかし、問い合わせそのものを減らせないか?
研修方法を見直せないか?
患者の流れを変えられないか?
こうした検討をせずに人員を増やし続ければ、仕事の非効率な部分も、そのまま残り続けることになります。そして、組織の人員も予算も無限ではありません。一つの業務に人を配置すれば、別の業務に使える人員は減ります。新たに人を採用すれば、その分の人件費が必要になります。
だからこそ、増員を求めること自体が問題なのではなく、なぜ人が必要なのかを十分に分析しないことが問題なのです。
忙しいから人を増やす。それも一つの方法です。
しかし、その前に考えてみませんか。
「なぜ忙しいのでしょうか?」
「その忙しさは、本当に必要な仕事によって生まれているのでしょうか?」
そして、
「人を増やす以外に、解決する方法はないのでしょうか?」
こうした問いを持つことが、業務改善の第一歩になるのではないでしょうか。
業務改善は、人を減らすためではない。
最後に、今回の話を整理します。
まず、今ある仕事が本当に必要なのかを考えます。
必要な仕事であれば、誰が担当するべきかを考えます。
そして、もっと効率的な方法がないかを検討します。
仕事そのものを減らせる仕組みがないかも考えます。
そのうえで、必要な人員を適切に配置します。
そして、変更した結果、本当に改善したのかを確認します。
もし十分な効果が得られていなければ、再び見直します。
この繰り返しが、合理的な業務運営につながるのだと思います。私たちが目指すべきなのは、単に少ない人数で多くの仕事をこなすことではありません。
限られた人的資源を、本当に価値のある仕事に使い、必要な医療を安全に、効率よく、そして持続的に提供できる組織をつくることです。
そのためには、現場の技師、受付担当者、看護師、管理者、経営者など、異なる立場からの視点が必要です。全員が同じ考え方になる必要はありません。むしろ、異なる立場から業務を見ることで、これまで気づかなかった無駄や、見落としていた必要性が見えてくることもあります。
「人が足りないから仕方がない」
「昔からこの方法でやっている」
「この仕事は、うちの部署が担当することになっている」
そんな言葉で、思考を止めてはいないでしょうか?
業務を減らすことが、常に正しいわけではありません。
人員を増やすことが、間違っているわけでもありません。
本当に必要な仕事を、必要な人が、適切な方法で行い、その効果を確認する。
それこそが、業務改善の本質ではないでしょうか?
そして、最後にもう一度、みなさんにお聞きします。
その仕事、本当に必要ですか?
忙しいのは、人が足りないからですか? それとも仕組みの問題ですか?
私たちが目指したいのは、「与えられた仕事を一生懸命こなすだけの組織」ではなく、「その仕事の目的や必要性を考え、よりよい方法へと改善し続ける組織」です。
今回の話を聞いて、あなたの職場で見直せることはありますか?
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