診療放射線技師は専門職であり,専門職とは,素人には理解できない高度の知識や技術によってサービスを提供する職業です.そして,専門職に従事する者は,常に新しい事実を見出し,それを学習しなければなりません.また,個人の責任として,継続学習による能力の維持,開発に努めなければなりません.そして,専門職の特質としては,
- 高等教育機関で教育を受け,独自の知識体系に基づいた高度で専門的な知識を有する.
- 自律性を有する.
- 専門性に独占的権限が伴う.
- 独自の倫理網領を備えている.
- 専門職業団体が存在する.
などが挙げられます.
診療放射線技師の専門職には,スペシャリストという特定の分野において特別の知識や技術を備えているものと,ジェネラリストという知識や技術を多方面あるいは広範囲に発揮するものに大別できます.では,診療放射線技師としてどのように学び,自身のキャリアをどのようにデザインしていけばよいのでしょうか.自身のキャリアをデザインするために欠かせない要素として,以下の4項目が挙げられます.
- 自分自身のことを理解する.
- 周囲にある様々な機会,制約,選択,起こりうる結果に気付くこと.
- キャリアに関連した目標を明らかにすること.
- 目標達成に向けて,必要な仕事や教育,体験をどのように得るかを計画すること.
そして,計画に沿って円滑にキャリアを形成するためには,自分自身が組織の一員であるという意識が非常に重要になります.そのための条件として,以下の5項目が必要であるといわれています.
- システム思考
- 自己実現(パーソナルマスタリー)
- メンタルモデル
- 共有ビジョンの構築
- チーム学習
システム思考とは,変化がどのようにしておこるのか,物事を見えている部分だけではなく,システムとして全体的にとらえて,要素間の相互作用に着目することです.例えば,患者間違いを減らそうとキャンペーンをしても,終わったとたんにインシデントの件数が元に戻ってしまった…ワークシートの運搬量を減らすためにワークシートレスにしたら,患者間違いや撮影間違いが増えてしまった…など,よかれと思って変化を起こしても,問題を解決するどころか,逆に問題を悪化させてしまう.問題の原因は,私たちの目の前にあるとは限らず,どのようにしたら変化を引き起せるか,正確に理解できていないことにあります.どのようにすれば変化を理解し,適切に対応することができるのか.変化を引き起こす構造や変化のプロセスを理解することです.
メンタルモデルとは,個々の心の奥底に持っているイメージや仮説のことで,相手のメンタルモデルを意識することで,その人の本当にやりたいことがなんであるかを考えることです.
チーム学習とは,お互いの意見の背景を探ることであり,なぜそう思うのか.私がその意見をもつ背景にどのような体験があるのか.相手がその意見をもつ背景にどのような体験があるのか.多様性から学ぶことであり,相手の話に耳を傾け,否定しない.そして,自分の意見を述べることです.
共有ビジョンの構築とは,共通の将来像や将来のありたい姿,一人ひとりのビジョンと組織のビジョンを一体にすることで,組織全体が深く共有することになる使命感,価値観,目標を構築することです.
自己実現(パーソナルマスタリー)とは,私が「どのようにありたいのか」,「何を創り出したいのか」明確なビジョンをもつことです.
さらに詳しく知りたい方は,センゲ,ピーター・M.著“ 学習する組織-システム思考で未来を創造する”を参考にして下さい.著者略歴は「BOOK著者紹介情報」より引用.
マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院上級講師,組織学習協会(SoL)創設者.MITスローンビジネススクールの博士課程を修了,同校教授を経て現職.旧来の階層的なマネジメント・パラダイムの限界を指摘し,自律的で柔軟に変化しつづける「学習する組織」の理論を提唱.20世紀のビジネス観略に最も大きな影響を与えた1人と評される.その活動は理論構築のみにとどまらず,ビジネス・教育・医療・政府の世界中のリーダーたちとさまざまな分野で協働し,学習コミュニティづくりを通じて組織・社会の課題解決に取り組んでいる.
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