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皆さんこんにちは

ワクチン接種が進んでいるにも関わらず、新型コロナウィルスは依然としてが猛威を振るい、非常に厳しい戦いを強いられています。医療現場で技師は、撮影準備から終了後の清掃まで神経を集中させて、コロナ感染防止を第一に業務に努めていますが、今後さらに業務は忙しくなってくると思います。大きなストレスに晒されている中、忙しいときこそ慎重に焦らず、事故のないようより一層注意して撮影してくださいね。

さて、漫画ラジエーションハウスやそのドラマによって診療放射線技師という職業が大きくメディアに取り上げられ、社会的にも我々の職業は以前からは考えられないくらい世間に知られる存在になってきました。このときは技師に明るい展望が開けたかに思われたのですが、ここ最近テレビなどのメディアで技師に関して話題に取り上げられるニュースは、セクハラなどの犯罪関係のニュースが大変多いように思います。

そこで今回、技師のセクハラについて対策や注意点をまとめました。

セクハラとは

セクシャルハラスメントの略。日本では性的嫌がらせともいわれています。

セクハラの基準

セクハラを判断するときの問題として「どこからがセクハラなのか」、「何がセクハラなのか」という点が挙げられます。

セクハラの判断は、被害者の主観を尊重する必要はありますが、客観的な基準があります。被害者が女性の場合は、一般的な女性の意見を基準としています。このセクハラに対する一般的な女性の捉え方というものは、年代や世代間で異なりますので、男性は常にその基準を確認しておかないとセクハラとして訴えられる可能性が高くなります。この記事を読んだのも何かの縁、これを機にセクハラの具体例を確認して、ご自身のセクハラに対する認識を修正しましょう。

セクハラの責任

セクハラにおける民事上の責任としては、
・慰謝料請求
・積極損害(被害が起こらなければ出費しなかったであろう費用)
・消極損害(被害がおこらなければ本来得られるはずの利益)

刑事上の責任は、
・強制性交等罪
・強制わいせつ罪
・名誉毀損罪
・侮辱罪
・軽犯罪法違反
などが考えられます。

診療放射線技師はセクハラになりやすい!?

診療放射線技師でセクハラ問題になりやすいのは、圧倒的に技師が男性で患者さんが女性の場合です。

診療放射線技師は業務独占資格です。医療行為として診療で人体に放射線を照射できるのは、診療放射線技師および医師、歯科医師のみです。したがって、これらの職種以外の者による人体への放射線照射は違法行為になります。

撮影室は放射線管理区域です。撮影室では、不必要な被ばくを防止するために立ち入りを制限しています。つまり、撮影室の環境は、閉鎖的で患者さんと技師の二人だけになりやすいということです。

何が起こるかわからない閉鎖的な環境では、人は警戒心が高くなり、神経質になりやすいものです。さらに技師は、撮影のときに撮影範囲を光照射野を使って確認しています。部屋が明るいとその光が見え難いために、部屋の明かりを薄暗くしていることも患者さんをさらに不安にさせる要因になっています。また、臥位の撮影のときは、技師は患者さんを見下ろすことになり、患者さんはより威圧的に感じることになるでしょう。

ジロジロ見る

無言で触る

技師本人はできるだけ良い写真を撮影しようと一生懸命に集中しているのでしょうが、患者さん側の立場でみれば、いろいろ触って性的なことを考えているのではないかと疑ってしまいます。

撮影を担当します技師の〇〇です!

服装を確認させてください。

照射する場所を確認しています。

姿勢が正しいか確認させてください。

痛かったり、嫌なことがあったら言ってください。

最初の挨拶と撮影中の声掛けはセクハラ防止に有効です。撮影に集中するとつい忘れてしまいますが、自分の身を守るためにも忘れず実行してください。せっかく一生懸命に撮影してもセクハラと訴えられたらあなたも患者さんもお互い深く傷つくことになります。

患者さんの検査に対する印象

患者さんが普段検査で検査着に着替える更衣について、どのように受け止めているか考えたことありますか?
皆川氏が実施した「更衣・脱衣マニュアル作成」のための患者さんのアンケート結果が大変参考になりますので以下に記載します。

・ 有効アンケート数は、男性1229名、女性1485名であった。
・ 若い年代では認知度が低い傾向にあるものの、多くの患者は更衣・脱衣の理由を理解していたが、説明を受けて理解している患者は半数以下と低かった。
・ 男性は更衣・脱衣に対してあまり抵抗はないようだが、抵抗がある理由としては「面倒である」が多くなった。
・ 若い女性ほど更衣・脱衣に対し不満を感じており、その理由として「恥ずかしい」が1番多くなった。また、「着替えるのはいいが脱ぐのはいや」という回答も各年代から出ていた。
・ 更衣室や検査着に対する不満や要望が多数寄せられたが、技師に対するものも寄せられ、説明不足や怠慢と思われるものがあった。また、セクハラと誤解されるような内容もあった。

山形市立病院済生館 皆川靖子他「更衣・脱衣マニュアル作成」委員会報告 第2報・患者さんのアンケート結果について」山形県放射線技師会より引用>

やはり患者さんは更衣に対して抵抗があり、できるだけ脱がなくても検査ができるように、脱いでも不快な思いをしないように丁寧な説明や接遇を心がけることは大切です。

病院・施設の問題

医療はサービス業だといわれていますが、昔は患者接遇は二の次、三の次でした。それが良いか悪いかは別にして、医療は営利以上に困っている人を助けたいという目的が先にあるために、患者接遇の優先順位は下がる傾向にあります。そういう土壌があって、患者接遇をスタッフに教育、指導を実施していない病院は今でも結構みかけます。

相間氏が実施した「更衣・脱衣マニュアル作成」のための各施設へのアンケート結果では、『62%の施設で、人権や恥辱に対しての話し合いが行われているが、多くの施設でセクハラ防止の文書はなく、技師のモラルに任せている。』と報告しています。

個人の資質の問題

病院で患者接遇の教育を受けていない医療従事者が、人を助けてやっているとサービス精神の欠片もない横柄な態度で診療や撮影をすることが、今の時代にまったく合わず、問題化してしまったように思います。身だしなみや言葉遣い、説明など聞いていてこっちがヒヤヒヤすることも日常よくあります。

医師の診断基準と技師の技術の問題

みなさんが患者さんの脱衣・更衣で一番遭遇する問題は、

『前はこれで撮ってもらった』

ではないでしょうかw。

これは、技師間で更衣の基準が統一されていない。または、診療科や医師によって求められる画像の基準が異なっていることが要因です。しかし、患者さんの状態や緊急性など、必要とされる画像の基準はその時々で変わるのは事実です。明確にここ!と更衣の基準を決めることも難しいのが実情です。胸部X線にスポーツブラを着けたまま撮るか脱いでもらうか技師間でも意見が分かれるところです。

まずは可能な限り技師間で更衣の基準を決めましょう。それだけでも更衣問題は大きく改善されます。

実は新人や不慣れな技師が一番危ない?

自分はセクハラとは無関係と思っている方がいるかもしれませんが、実は新人や不慣れな技師がセクハラリスクを一番抱えているんです!なぜなら、経験豊富な技師は患者さんにほとんど触りません。そして撮影に余裕があるので、患者さんにより一層気を配ることができます。

一方、新人技師や経験の少ない技師は、よく触り、よく見る。言葉も少なく、撮影に集中し過ぎて気配りを忘れてしまいます。タオルをかけずに膝を曲げたり、そのままじっとみたりする。当然患者さんは、前と違うことに違和感を抱きます。前はここまで触られなかった。なんでこんなに長い時間じっとみているのだろう。不快感や不信感が増してきます。セクハラなんじゃないか。

新人技師は気をつけてください。やはり、なんのために触るのか、みるのか説明することはセクハラを回避するためにも重要です。

セクハラ防止の注意点

山形県放射線技師会では、衛生思想啓蒙事業の一環としてセクハラ防止のリーフレットを作成しています。以下にそのポイントを掲載します。

1.はじめに
 X線撮影では更衣・脱衣を伴うが、それを当然とは思ってはいけない。患者さんの不安を取り除き、プライバシーが守られる事が必要である。
2.技師の心得
 患者さんの目線で、やさしい言葉を用いて、行動には自信を持つ。
3.部屋の点検・清掃
4.検査室への誘導
 患者さんのフルネームでの呼び出し確認を行い、きちんとしたあいさつは印象を良くし、検査の協力を得やすい。
5.検査前の説明
 検査の概略・所要時間と共に、なぜ更衣・脱衣が必要なのかを説明し、協力をもらう。
6.更衣室
 検査着の説明、更衣室の使い方、プライバシーの保護
7.検査・撮影
 ポジショニングのための体への接触では、その説明と了解を得ること。羞恥心を感じないようにバスタオルなどの活用、検査室内の温度管理をしっかり行う。
8.検査終了
 患者さんの協力に感謝する。身だしなみを整えるまでせかさない。「おだいじに。お疲れさまでした。」などの言葉が、思いやりにつながる。退室を確認する。

鶴岡市立荘内病院 落合一美他「更衣・脱衣マニュアル作成」委員会報告 第3報・マニュアル作成について」山形県放射線技師会より引用

まとめ

我々の行為は、今や社会からは常に懐疑的にみられていることを肝に銘じて職務にあたる必要があります。技師は業務で行っている患者さんへの更衣の指示や撮影のための身体への接触は、技師からすればいつものことですが、患者さん側からすれば非日常的ですごく印象に残る体験です。医療行為はインフォームドコンセントが前提です。検査着への着替えや患者さんの身体への接触も医療行為の一つです。必ず同意のもとに行う必要があります。

職場のハラスメントは以下のサイトが参考になります。

事業者や管理職の方はこちらもチェック!
事業主用セクシャルハラスメント対策(厚生労働省 都道府県労働局雇用均等室)

参考文献

診療放射線技師の接遇ガイドライン(社団法人神奈川県放射線技師会)
篠田総合病院 相間幸治他「更衣・脱衣マニュアル作成」委員会報告 第1報・各施設へのアンケート結果について」山形県放射線技師会
山形市立病院済生館 皆川靖子他「更衣・脱衣マニュアル作成」委員会報告 第2報・患者さんのアンケート結果について」山形県放射線技師会
鶴岡市立荘内病院 落合一美他「更衣・脱衣マニュアル作成」委員会報告 第3報・マニュアル作成について」山形県放射線技師会

 

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