昨年、2015年6月に医療被ばく情報ネットワーク(Japan Network for Research and Information on Medical Exposures:J-RIME)より、診断参考レベル(Diagnostic Reference Levels 2015;DRLs 2015)が公表されました。この診断参考レベルにより、我々診療放射線技師は、医療被ばくを考慮した放射線業務と最適化をめざし、管理することが求められるようになったといえます。

そんなこと突然いわれても…

CTなんてdynamic4相バンバン使ってるし…すべての検査単純・造影セットで回してるし…再撮上等だし…

なんて方!

今月2016年10月に診断参考レベル運用マニュアルがリリースされましたので、耳の穴かっぽじってじゃなかった、目ん玉見開いてよく読みましょう!

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正当化と最適化

 診断レベル運用云々より、そもそも放射線の使用にあたって、行為の正当化と最適化の違いを知ってますか? あ、知ってる方は飛ばしてくださいねw。知らない方や忘れてる方は復習です!

正当化とは、

検査の適応や有効性の判断、実施するかしないかを決定すること

つまり正当化とは、主に医師が担う領域のことになります。

次に最適化とは、

検査施行が決まった時に診断・治療の目的を担保した上で、低侵襲な検査の組み立てを行うこと

ここです!ここ!

我々診療放射線技師のスキルが必要になるところです!
この最適化において、診断参考レベルが活用されるのです!

・引用サイト
Innavinet CTの診断参考レベル Diagnostic Reference Level(s)井田 義宏 Session 2(外部リンク)

・さらに詳しい情報
ATOMICA ICRPによる放射線被ばくを伴う行為の正当化の考え(外部リンク)
ATOMICA ICRPによる放射線防護の最適化の考え(外部リンク)

診断参考レベルの注意点

 診断参考レベルについて詳しい情報は、2015年6月7日に発表された最新の国内実態調査結果に基づく診断参考レベルの設定をみてください。ここでは注意点だけ記します。

診断参考レベルDRLは、
・吸収線量を使用し、実効線量を用いて設定すべきでない。
・市場調査の4分の3位点の値であり、平均値や中央値よりも高い値となっている。
・優れた診療と劣ったな診療の境界ではない。
・線量の最適値ではない。
・線量限度ではない。
・個々の被検者に適応すべきではない。
・個々の被検者のリスク評価に用いるべきではない。

つまり線量限度は、超えてはならない線量値であるが、DRLは、臨床的な必要性があれば超過してもよい。新しい技術や診療に必要など臨床的に正当化される場合、体格の大きい被検者の場合は、診断参考レベルを超過してもよい。また、職業被ばくの線量限度とは異なり、DRL は個々の患者の被ばくを制限するものではない。

 DRLの目的は、最適化であって、線量低減ではない。線量の最適値は、各施設の治療や診断の質、装置のレベルで考える必要がある。正当化がなされた検査は必要な診断情報が得られなければ、かえって無駄な被ばくとなる。検査では、マージンを含んで必要な線量を用いることが前提である。

・引用サイト
診断参考レベル運用マニュアル(外部リンク)
Innavinet CTの診断参考レベル Diagnostic Reference Level(s)井田 義宏 Session 2(外部リンク)

診断参考レベルの医療現場での活用の流れ

実際の流れは、このような感じでしょうか。

施設で用いている典型的な線量が DRL を超えているか調査 → 超えていた場合は、臨床的に正当な理由があるか確認 → 理由がない場合は、高線量の原因を突き止める → 改善・対策を講ずる → 改めて(3〜6ヶ月後)評価する

運用マニュアル

 そして、今年の2016年10月1日に日本診療放射線技術学会の放射線防護委員会が中心となって、診断参考レベル運用マニュアルが発表されました。このマニュアルの目的は、診断参考レベルを正しく理解して運用することであり、測定が不慣れな方でも測定できるようにシンプルで判りやすく記載されています。

本マニュアルでは、測定器を持っていない施設でも比較できるように、NDD法を用いた代替え案まで記載されており、やり方は非常に丁寧に解説されています。また、Q&Aも非常に充実した内容になっており、大体の問題はここで解消できるように編集されています。

被ばく線量計算ソフト

平成27年6月にJ-RIMEから出された最新の国内実態調査結果に基づく診断参考レベルの設定では、線量計をもっていない施設については、線量計算ソフトを使って評価することもできると書いてあります。

国内でよく使われているNDD法は、現在ではNDD法を発展させたEPD(Estimation of Patient Dose in diagnostic X-ray examination)になっています。EPDは、平均的日本人体型の患者線量(表面線量、臓器線量)に近い値を求めることができます。
EPDについて詳しくはこちら(外部リンク)>>

その他の被ばく線量計算ソフトは、日本医学物理学会のホームページが参考になります。
日本医学物理学会のホームページはこちら(外部リンク)>>

講習会

 まだ始まったばかりの診断参考レベルですが、技術学会や技師会、日本画像医療システム工業会(現在はやってない?)などで、”放射線被ばく管理のための測定器と校正”や”被ばく線量適正化講習会”、”DRLセミナー”などの名称で講習会やセミナーが行われていますので、積極的に参加してください。

参考・関連サイト一覧

医療被ばく情報ネットワークJ-RIME(外部リンク)
診断参考レベルDRLs 2015(外部リンク)
診断参考レベル運用マニュアル(外部リンク)
日本放射線技術学会 放射線防護関連情報(外部リンク)
Innavinet CTの診断参考レベル Diagnostic Reference Level(s)井田 義宏 Session 2(外部リンク)
医療での放射線安全の疑問にお答えします(外部リンク)

 

放射線技師.com