安部内閣が掲げる「すべての女性が輝く社会づくり」という政策を打ち出す以前から、診療放射線技師の世界では女性が輝いて仕事をしています。もともと資格職種であるこの職業、収入は男性とかわらず、経済面では安定した職業であるといえます。そして今や、社会的なニーズから、マンモグラフィを取り扱っている施設では、女性の診療放射線技師が欠かせません。また、技師としての経験が豊富になってくると、自分の体力や性格、ライフスタイルに合わせて仕事内容をある程度選択できるところも女性にとって魅力的であるといえます。このように、女性にとって比較的働きやすい職業である診療放射線技師は、出産後、共働きを選択する女性が多くなってきています。今回は出産後、共働きを選択し、育児時間を活用した某国立系大学病院に勤務している診療放射線技師Aさんにその体験をお聞きしました。

こども体験談1PAK85_kouendehashiruonnnanoko20141115141128-thumb-autox1000-18029 私は現在、某国立系大学病院勤務で技師歴は13年になります。主人も同じ診療放射線技師で、小学1年生と3年生の娘の4人家族です。2013年当時、長女が保育園から小学校に入学したばかりで、授業後は学童保育、下の娘は保育園に預けていました。勤務先から自宅までは1時間かかり、子供の迎えが小学校と保育園の2か所に増えたこともあり、勤務が終了してから、忙しい日々が始まりました。子供がまだ2人とも保育園に預けていた頃は、20時まで延長保育が利用でき、迎えも1か所でした。さすがに子供の迎え時間が20時になることはなかったのですが、非常時に20時まで預かってくれるという安心感は、働く者にとって気持ちを楽にしてくれました。そして、子供の成長とともに手がかからなくなってきていたので、小学生になったらさらに楽になると考えていましたが、これが甘い考えでした。

 上の娘が小学生になって学童保育になると、迎えの時間は19時までとなり、業務終了近くに緊急検査が入ると就業時間が延長するので、お迎えに間に合わないかもと焦ることもありました。加えて、宿題や明日の授業の準備などがあるのですが、うちの子は親がサポートしないと全くできない状況でした。これができる子は全く不自由ないのかもしれませんが、「これだから保育園組の子は…」といわれるのも嫌だったので、頑張ってサポートし、しつけにも力を入れていました。そのような忙しい日々を過ごすうちに、私自身に心の余裕がなくなってきていて、もしかしたらうちの子には愛情が足りていないのかもしれないと心配するようになりました。ある日、職場から配布された冊子に育児時間短縮制度のことが紹介されており、その頃制度推進キャンペーンをしていたので、思い切って利用してみようと思いました。

 育児を支援する制度にはいろいろあるのですが、それらを利用するにあたって、どれが自分にあっているのか、職場から配布された冊子を精査して、主人と話し合い、職場の上司や人事の方に相談しました。利用しようと考えた制度の中に、育児短時間制度と育児時間(旧部分休業)というものがあったのですが、冊子を熟読してもあまり違いがよくわかりませんでした。結局、自分が理解した違いは、育児短時間制度は取得期間1年以上で病院長か学校長の承認が必要。育児時間制度は収得期間1年未満も可で、所属長の承認が必要で、利用期間中、毎月制度を利用した分だけを給与から減額して支給されるというもの。どうやら、育児短時間制度は申請から承認、その後の変更が育児時間制度よりも面倒な感じで、育児時間制度の方が気軽に後々融通が利きそうな気がしたので、育児時間制度を利用することにしました。私の場合、事前に申請する制度の取得期間は1年間、通常の就業時間は8時30分から17時15分のところ、毎日2時間の育児時間を申請して15時15分までとしました。育児時間制度は、利用する曜日の選択も可能で、延長も可能といわれましたが、最初に申請期間を少なくして、後から延長するよりも、利用している途中で必要ないと気付いた時に収得時間を減らす方が、職場の印象もよくなると考えて上限いっぱいで申請しました。

 実際の制度利用期間中、生活は非常に楽になりました。15時15分に退社するので16時過ぎには帰宅できました。明るいうちに保育園に迎えにいくことができて、夕食の準備から娘の小学校の宿題、次の日の準備など、ゆとりをもって対応することができるようになりました。恥ずかしい話ですが、制度を利用する前は、毎日分刻みの時間に追われる日々を過ごしていただけに、ようやく人並みの生活を過ごすことができたと感動しました。娘が、「ちょっと友達と遊んでくる。」と笑顔で出ていく姿をみると、制度を利用してよかったと心から思いました。

 しかし、制度の利用は良い面ばかりではありません。制度利用前の家事は、主人と分担していましたが、制度利用期間中は、当然ですがこちら側の家事の負担が大きくなります。主人の帰宅時間は自然と遅くなり、給料は半分くらいになりました。もともと残業が少ない部署だったので、それほど給料は下がらないと考えていましたが、予想していた金額よりも少なくて驚きました。これが残業の多い方だと制度を利用するときには、経済面でさらに覚悟が必要になると思います。それから、検査業務とは別に、勉強会やスタッフの教育などは夕方に開催されることが多く、制度利用期間中はそれらに参加することができなくなりました。家庭の時間が増えた分だけ、会社で時間に追われていたような気がします。当時新人の指導をしていたのですが、私が検査中に先に帰ることによって、テクニカルなこと以外の大事なことが伝えられなくて、帰り間際にいいたいことだけ一方的に伝えて帰ることも多かったような気がします。中途半端な指導であったことは否めませんでした。それから、当初の予想通り、業務が忙しくて定時に帰れないときもありました。しかし、私が利用した育児時間制度は、月毎に利用時間を報告するため、給与の減額は正確に計算されていました。

 私は1年間、育児時間制度を利用しましたが、1年はあっという間に過ぎ、いつもの忙しい日々に戻りました。もう1年延長して利用したいという気持ちはありますが、愛情をもって娘たちと過ごした日々は子供たちに笑顔をもたらし、私自身心が元気になりました。今は下の娘も小学生になり、2人で学童保育に預けているため、迎えが1か所になって楽になりました。家では長女がお姉さん面して、妹の宿題をみたり、次の日の準備の手伝いをしてくれているので、心にゆとりをもつことができています。

育児短時間制度と育児時間については下記リンク先を参照してください。
http://www.komu-rokyo.jp/arc/etc/200708ikujitanjikan_leaf.pdf

 

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